TPP交渉参加表明の意味がわかる  戦後史の正体 1945-2012 (「戦後再発見」双書)孫崎享

アベノミクスで円安株高景気上向き支持率上昇と絶好調のリベンジ安倍首相が今日、多くの反対を押し切ってTPP交渉参加表明をした。
TPP、環太平洋云々と言いながら要はアメリカ相手の交渉。
安倍首相は例外なき交渉ではないことを勝ち取ったなどといっているがそんなのは当たり前。
逆に自動車関税の継続を約束させられ、既に日本のメリットはなくなった。
乗合バスのTPPは日本に都合のいい案件はつぶされ、悪い案件は受け入れざるを得ない状況に、アメリカ以外の他国を理由として飲まされるリスクがある。
もしかしたら、それでも交渉に望まざるを得ない理由を書いているのがこの本。

ネットで書評を読むと、この本を「トンデモ本」と揶揄する向きがけっこうある。
1945年9月2日のミズーリ号での降伏文書への署名に始まるこの本は、
終始日本のアメリカに対するスタンスという視点で政治を語っている。
歴代首相を対米追従派か、自主派かで色分けしている。

ここ数年トンデモ本やpodcastの影響を受け?小沢氏起訴をはじめとする今の日本の政治の流れは相当アメリカに牛耳られている、
という認識を既に持っている私にとっては、さほどびっくりする内容ではなかった。
1945年の実質アメリカに対する敗戦は、70年が立とうとしている今日にも尾を引き、
アメリカは自国の都合で日本に接している、というのを再認識した次第。

しかしその中でも新たな発見だったのは

・先述した降伏文書調印こそが終戦の日であるということ
・署名した重光元外相は、”自主派”であるがために吉田元首相に失脚させられ、吉田失脚後の芦田元首相の時に復活している、
 気骨のある人物。
・吉田茂元首相は対米追従の先鋒だったということ
・岸信介元首相は、冷戦こそが日本復活の唯一の機会であることを冷戦がはじまる相当前から獄中で思い、
 復活して首相になってからは”自主派”として戦おうとしていたこと。
 アメリカが金を回した安保闘争で政権を捨てざるを得なくなったこと。
 それが見えたとたんに朝日と讀賣は「暴力による運動に反対」と、安保闘争を収束の方向に向けたこと
・鈴木善幸元首相は外交音痴、ではなく、自分の信念のもと、「日米同盟」に意味を持たせない発言をした
・竹下元首相もアメリカに好まれなかった
・福田親子も闘って短命
だった。

最近の
・田中元首相が中国に近づきすぎてロッキードでアメリカに刺されたのはあまりに有名
・橋本元首相も、債権引上げ発言が命取りというのも周知
・小沢元民主党党首は首相になれるはずだったのに、アメリカ駐留軍に言及したので陸山会で刺されたのも周知
・鳩山元首相も普天間問題、有事の時のみ米軍配備に言及した貯めに刺されたのも周知

戦後の長期政権、吉田、佐藤、中曽根、小泉はいずれも対米追従派。アメリカに都合のいい政権で、かつ国民に人気があれば
長持ちする。追従でも国民の民意が離れれば短命。三木、大平、安倍、麻生、菅、野田もこちら。
森、宮沢、細川らは独自路線。
まあこの辺の区分けは微妙なところもあろう。どの首相もアメリカを意識しないわけにはいかず、中途半端な首相も多かったはず。
明確に親米の首相は、わかりやすさもあり、長期政権につながったのかも。

それにしても、アメリカに都合の悪い首相をでっちあげでも逮捕し、政治生命を断つという手法はあってはならないと思う。
造船疑獄、ロッキード、リクルート、陸山会、どれも最終的には犯罪の実態がないということで落ち着いている。
検挙してマスコミを使って騒いで辞任に追い込めば目標達成、ではあまりに酷い。
それでも法治国家か?
もっといえば、それがアメリカ主導ということがあり得るのか?日本人が日本人の首を差し出すのか?信じられん。

安倍さんは条件付きTPP参加を決めるという。
しかし自動車関税の維持がすでに決まっている。何が自由貿易だか。TPP参加のメリットはもうないはず。
それでも乗り合いバスであるTPPに入り、アメリカの言うことを聴かざるを得ないとすれば、
やはり日本はアメリカの属国のままなのかもしれない。

ちなみにわたしは自由貿易は賛成。農業も開放して勝負すればいいと思う。カロリーベースの食糧自給率はナンセンス。
ただ、日米のほかは中韓が入らず、環太平洋の弱小農業国だけが参加するTPPは無意味。国同士でやればいい、という考え方。

目次
はじめに
序章 なぜ「高校生でも読める」戦後史の本を書くのか
第一章 「終戦」から占領へ
第二章 冷戦の始まり
第三章 講和条約と日米安保条約
第四章 保守合同と安保改定
第五章 自民党と経済成長の時代
第六章 冷戦終結と米国の変容
第七章 9・11とイラク戦争後の世界
あとがき
戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)
創元社
孫崎 享

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